建設現場や工場などの技能職において、担い手の多様化が進んでいる。2024年の建設職に従事する女性は約1万1千人で、2014年比で24%増と男性の伸びを上回った。特に大卒女性の入職は、同期間で約8倍の約6千人と大幅に増加している。背景には大学進学率の上昇による高卒男性の減少があり、企業は人材確保のために採用の対象を女性へ広げている。 積水ハウス建設ホールディングスは、住宅建築を担う技能職「クラフター」において、2023〜25年度に採用総数の約1割に相当する女性を約30人採用した。住友林業ホームエンジニアリングは、企業内訓練校に女子寮を設けるなどの環境整備を行い、女性技能者の育成を進めている。また、函館どつくでも2024年に初めて女性の生産職を採用した。 現場職では、工程の自動化や働き方改革に加え、事務職と比較した際の賃金優位性の向上も入職のハードルを下げている。一方で、女性を組織の中核に育てるためには、柔軟な働き方を支援する制度や、学歴別に設計された賃金・昇進体系の刷新が求められている。2040年には建設職で約66万人、生産職で約112万人が不足するとの予測もあり、多様性を高める職場づくりと人事制度の改革が急務となっている。
Sourcehttps://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260628&ng=DGKKZO97207600X20C26A6EA5000

積水ハウス建設ホールディングスは女性技能職の採用を増やしている
高卒男性が中心だった現業の担い手が変わりつつある。建設現場の技能従事者となる女性は過去10年で2割増え、大卒女性に限ると8倍に伸びた。大学進学率の上昇で高卒男性が減少するなか、現場の維持には女性の働きやすい環境の整備が求められる。
雇用動向調査を分析すると、2024年に建設職(技能職)に就いた女性は約1万1千人で14年比で24%増え、男性の伸び(16%)を上回った。特に大卒女性(院卒含む)の入職が伸び、同8倍の約6千人。伸び率は大卒男性(約2倍)を上回った。工場などの生産職も男性が7%減る一方、女性は2%増えた。
パーソルキャリア(東京・港)の転職支援サービス「doda」ではデータが遡れる23~25年、技能従事者などの建設職に転職した女性は39%増え、伸び率は男性(19%増)の2倍だった。
高卒を中心とする大卒未満の男性は現場労働の担い手の中核で、現在も建設職は8割、生産職は5~6割程度を占める。ただ、近年は大学進学率が上昇し、高卒後すぐに就職する男性は25年に約8万人と10年で3割減った。企業は人材を確保するため、採用の射程を女性に広げている。
積水ハウス建設ホールディングスもその一社だ。同社は23~25年度、住宅建築を担う技能職「クラフター」で女性を約30人採用した。男性含む採用総数の1割だ。22年度まで同職で採用した女性は累計約10人。人事部の沢井豊氏は「住宅需要は底堅く、施工能力の確保には担い手の多様化が不可欠だ」と強調する。
25年に商業高校を卒業後、クラフターとして入社した伊之坂ジェイミさん(19)は「女性が少ない職場に不安もあったが、先輩の手厚いフォローで慣れてきた。女性でも現場で活躍できることを後輩に伝えていきたい」と話す。
住友林業の住宅施工子会社、住友林業ホームエンジニアリング(東京・新宿)は2021年に左官1人を採用して以来、毎年採用し、26年は6人が入社。現在は30人の女性技能者が働く。入社時に入校する企業内訓練校に女子寮を設けた。
生成AI(人工知能)の台頭で事務職の雇用代替リスクが高まり、現業の安定性も見直されている。大学院で建築技術史を学び、4月から大工の仕事を始めた女性(25)は「時代が変わっても続けられる。物理などの知識も駆使し、創造的な仕事だ」と話す。
造船会社の函館どつく(北海道函館市)は24年に初めて女性の生産職を採用し、現在3人の女性が働く。23年に約230人いた生産職は全員が高卒や専門学校卒の男性だった。
身体的負担が大きい現場職は女性らに敬遠されてきたが、工程の自動化や働き方改革も進み、入職のハードルは下がっている。人手不足で大工や自動車組立工の平均賃金は20~24年に20~30%上がり、10%程度の事務職より待遇面の優位性も増している。
採用した女性を定着させ、組織の中核に育てるには柔軟な働き方を支援する制度が不可欠だ。デンソーは女性班長同士がキャリアの悩みを話し合う会を開いている。生産現場の技能人材で管理職に占める女性比率を25年度の3.3%から30年度までに5.5%に引き上げる。
日本企業の多くは高卒と大卒で賃金体系が異なる。リクルートワークス研究所の古屋星斗主任研究員は「学歴別に設計された賃金や昇進の仕組みを刷新する必要も出てくる」と指摘する。同研究所の予測では、40年時点で建設職は約66万人、生産職は約112万人不足する見通し。多様性を高める職場づくりや人事制度の改革が急がれる。
(編集委員 松井基一)