田舎の友人から、梅やらっきょと共に、食卓に欠かせない大根のお香香(こうこ)が届いた。これらは友人の母親が作っていた、家族の安らぎを感じさせる味である。 かつて、母親の味を誰が受け継ぐかについて、姉は「母親に万が一のことがあった際、どうしても欠かせないのはお香香である」と主張した。そのため、台所仕事に長けた妹が、母親から味の伝承を受けることになった。 妹は当初、気温や湿度、糠の状態などの影響もあり、母親のような一定の味を出すことに苦労したが、数年間の修行を経て、7年目に母親から合格を得た。母親の逝去後、その味は友人が受け継いでおり、著者は今もその愛情のこもった味を噛み締めている。
Sourcehttps://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO97203140X20C26A6MM0000
田舎の友かららっきょうの甘酢漬が届いた。〝この季節は梅とらっきょでおおわらわ〟という絵手紙を添えて。私があてにしているのを承知して毎年送ってくれるのだ。いや、こればかりではない。大根のお香香(こうこ)! 超絶品で、ないと食卓が寂しくなる。
元を辿(たど)れば友人のお母さんの味だ。お母さんが高齢になられて、友人はお姉さんと話し合ったという。つまり、どちらが母の糠(ぬか)漬けの味を受け継ぐかについてである。姉は言った。「私、お母さんに万が一のことがあった場合、何が困るか考えてみたの。お母さんじゃなきゃどうしてもダメなことって何だろうって。ズバリ、お香香やったちゃ。子供の頃から食べ続けとるがに。あれがないと、きっと私、変になると思うわ」と。そして台所仕事に優れている妹の方が、お母さんが元気なうちに指導してもらうことになったのだった。
最初はなかなか上手く行かなかったそうだ。教えられた通りに頑張っても何かがハッキリ違ったらしい。糠は触る人によって微妙に変化するというし、その年々の気温や湿度、大根そのものの出来も違うので仕方がない……と思いきや、お母さんの方は常に一定の味を出せるのだから不思議でならなかったと妹は言った。でも、それが5年目、6年目となった辺りからはほぼほぼ母の味に近づき、7年目にお母さんから合格をもらったというのだった。
その翌年にお母さんが旅立たれ、そこからは友人のをいただいている。
愛情がこもった家族の安らぎの味。私は今日も友人の母の味をかみしめています。
皆様、半年間ありがとうございました。