多くの課題が指摘されているのに、高市早苗政権は強行するつもりなのだろうか。食料品の消費税率を1%に引き下げ、現金給付と合わせて消費税を「実質ゼロ」とする時限措置のことである。

消費税減税などを議論する超党派の社会保障国民会議は、議長を務める自民党の小野寺五典氏が24日に中間とりまとめ案を示し、6月中の決定を目指している。

だがこれは首相が「悲願」とする減税ありきの内容で、減税終了後の景気への影響など、野党や経済界から指摘された課題への対策をほとんど示していない。

中間とりまとめ案は2027年4月から2年間限定で食料品の消費税率を1%に下げ、さらに1%分の税収にあたる約6000億円を中低所得者に現金給付することで「実質ゼロ化」するとした。

首相は今年2月の衆院選公約に食料品消費税ゼロの「検討加速」を盛り込み、26年度中の実現に意欲を示した。しかし、税率をゼロにするとレジシステムの改修に1年程度かかるため、半年ほどで済む1%案が有力となっていた。

わざわざ現金給付を組み合わせてまで「実質ゼロ」をうたうことに、首相や自民党の体裁を保つ以外の意味があるのだろうか。

そもそも税率が1%になっても食料品の店頭価格がそのまま下がるとは限らない。小売業者は円安や中東情勢を背景とするコスト増に直面しており、減税を機に値上げに動く可能性があるからだ。

物価高対策としては中低所得者に絞った現金給付のほうが、まだ筋が良い。首相は減税を給付付き税額控除を導入するまでの「つなぎ」と位置づけたが、減税終了後の29年秋に導入予定の制度は税額控除を組み込まず、所得連動型の現金給付になる見通しだ。

それなら弊害が多く道理に合わない減税はやめ、年6000億円の現金給付を増額する形で、27年4月に新制度を前倒しで導入したほうがよほどすっきりする。

財源の議論も足りない。社会保障の安定財源である消費税を切り崩すなら、代替財源のあり方や制度の不安定化を防ぐ対策を練ることが国民会議の役割のはずだ。

ところが税外収入のほかに補助金や租税特別措置を見直して財源を捻出する案が示されたのは今月26日である。しかも、具体化するのは26年末になるという。これで秋の臨時国会に減税法案を出すのは、あまりに拙速だ。