博報堂DYホールディングス(HD)は近く、人工知能(AI)による閲覧を防ぐ広告配信を始める。人になりすましたAIがクリック数を水増しする行為の被害は世界で年14兆円に上る。認証済みの人だけに配信し、広告主の損失を防ぐ。

AIによるクリック数の水増しはアドフラウド(広告詐欺)と呼ばれる。悪徳業者が自ら立ち上げた広告表示枠付きのサイトに広告を出稿させ、AIボット(AIや自動化ソフト全般)が何度もクリックする。水増しされた閲覧数をもとに広告主に課金し、広告費をだまし取る仕組みだ。

博報堂DYHDはアドフラウド対策広告の新会社「Ads for Humanity」(東京・港)を立ち上げた。2031年度に売上高200億円を目指す。

アドフラウド対策で作った広告を視聴することでポイントがたまるアプリを活用する。

博報堂DYHDはオープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)らが設立した米企業と24年に提携。目の虹彩で生体認証する仕組みを生かした広告配信アプリを実験してきた。このアプリをサービスに使う。同アプリは認証済みのユーザーを世界で約1800万人持つ。

韓国LG電子とも組んだ。ブロックチェーン上で広告の表示履歴を記録し、改ざんによる不正請求も防ぐ。悪徳業者によるAIボットでの水増し以外でも、クリック数などを改ざんするリスクを回避する。

広告料金はまず通常と同程度で提供する。効果が出てくれば価格の見直しも検討する。

新会社の森田英佑社長は「デジタル広告の効果はより精度が高くなるよう求められている。AIボットへの対症療法ではなく根本療法をとる」と話す。

企業が支払う広告費用は膨らんでいる。英調査会社ジュニパーリサーチによるとアドフラウドによる23年の損失額は世界のデジタル広告の支出総額の22%にあたる842億ドル(約14兆円)に上った。28年には1723億ドルまで膨らむとした。