「崩壊するまでバブルかどうかは分からない」。グリーンスパン元米連邦準備理事会(FRB)議長は、バブルの本質をこう表現した。

バブルは価格がファンダメンタルズから乖離(かいり)して高騰した状況を指す。問題は価格がどこまで異常なのかを、その渦中に客観的に知るすべが乏しいことだ。人々は急落して初めてバブルだったことを事後的に知る。

だが、ガルブレイスやキンドルバーガーらの研究により、17世紀のオランダのチューリップバブル以来、古今東西のバブルが発生した際の条件は特定されている。

第一の条件は、人々の生活を一変させるイノベーションが起きることだ(技術革新)。第二の条件は、金融が緩和した状況にあり、人々がその技術に投資するお金があふれていることだ(カネ余り)。第三の条件は、誰もがお金をもうけようと一斉に投機に走ることだ(大衆の投機熱)。

このバブル三条件がきれいにそろったのが、2000年を頂点とするITバブルだった。インターネットという新技術に人々は熱狂し、相次いで上場した赤字の新興ネット企業に我先に投資した。

ITバブルの起点はブラウザーを開発したネットスケープ・コミュニケーションズの1995年8月のIPO(新規株式公開)だ。一方、今回の人工知能(AI)ブームの起点は22年11月のオープンAIによるチャットGPTの一般公開である。

現在のAI関連株の高騰は、ITバブルとよく似ている。ナスダック総合株価指数について、95年8月を起点とするITバブル時と22年11月を起点とする今回を重ねると、現在のチャートは忠実にITバブルをなぞっている。

もちろん社名に「ドットコム」という文字が入っていればどんな企業の株も買われたITバブルと今回は単純に比べられない。AIブームの中心にいる半導体企業は空前のキャッシュを稼いでおり、今回はファンダメンタルズの裏付けがあるようにみえる。

だが、米著名投資家ジョン・テンプルトンがいみじくも言ったように「今回は違う」というフレーズほど高くつく言葉はない。そう皆が思ったとたんに株価はうなぎ登りに上昇していき、最後は制御不能となる。株価が人間の心理に左右される限り、バブルは歴史の韻を踏む。

(井蛙)