バブルは価格がファンダメンタルズから乖離して高騰する状態を指すが、渦中に客観的な判断を下すことは難しく、急落して初めて事後的に認識されるものである。歴史的なバブルには、技術革新、金融緩和による余剰資金、そして大衆の投機熱という3つの共通条件が存在する。 2000年を頂点としたITバブルは、インターネット技術への熱狂と資金流入によって引き起こされた。現在のAIブームも、2022年11月のChatGPT公開を起点として、ナスダック総合株価指数のチャートがITバブル時をなぞるように高騰しており、構造的な類似性が見られる。 現在のAI関連株、特に半導体企業は多額のキャッシュを稼いでおり、ITバブル時とは異なりファンダメンタルズの裏付けがあるようにも見える。しかし、「今回は違う」という言葉は過去のバブル崩壊時にも繰り返されてきた。株価が人間の心理に左右される限り、バブルは歴史の韻を踏む。
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「崩壊するまでバブルかどうかは分からない」。グリーンスパン元米連邦準備理事会(FRB)議長は、バブルの本質をこう表現した。
バブルは価格がファンダメンタルズから乖離(かいり)して高騰した状況を指す。問題は価格がどこまで異常なのかを、その渦中に客観的に知るすべが乏しいことだ。人々は急落して初めてバブルだったことを事後的に知る。
だが、ガルブレイスやキンドルバーガーらの研究により、17世紀のオランダのチューリップバブル以来、古今東西のバブルが発生した際の条件は特定されている。
第一の条件は、人々の生活を一変させるイノベーションが起きることだ(技術革新)。第二の条件は、金融が緩和した状況にあり、人々がその技術に投資するお金があふれていることだ(カネ余り)。第三の条件は、誰もがお金をもうけようと一斉に投機に走ることだ(大衆の投機熱)。
このバブル三条件がきれいにそろったのが、2000年を頂点とするITバブルだった。インターネットという新技術に人々は熱狂し、相次いで上場した赤字の新興ネット企業に我先に投資した。
ITバブルの起点はブラウザーを開発したネットスケープ・コミュニケーションズの1995年8月のIPO(新規株式公開)だ。一方、今回の人工知能(AI)ブームの起点は22年11月のオープンAIによるチャットGPTの一般公開である。
現在のAI関連株の高騰は、ITバブルとよく似ている。ナスダック総合株価指数について、95年8月を起点とするITバブル時と22年11月を起点とする今回を重ねると、現在のチャートは忠実にITバブルをなぞっている。
もちろん社名に「ドットコム」という文字が入っていればどんな企業の株も買われたITバブルと今回は単純に比べられない。AIブームの中心にいる半導体企業は空前のキャッシュを稼いでおり、今回はファンダメンタルズの裏付けがあるようにみえる。
だが、米著名投資家ジョン・テンプルトンがいみじくも言ったように「今回は違う」というフレーズほど高くつく言葉はない。そう皆が思ったとたんに株価はうなぎ登りに上昇していき、最後は制御不能となる。株価が人間の心理に左右される限り、バブルは歴史の韻を踏む。
(井蛙)