【シリコンバレー=山田遼太郎】米新興アンソロピックは26日、先端AI(人工知能)「クロード・ミュトス」の最新版の提供を再開すると表明した。米政府の許可を受け、米企業や米政府機関など100以上の組織が使えるようになる。

米商務省が同日付でアンソロピックに書簡を送った。12日に事実上禁止した「ミュトス5」の2週間ぶりの提供再開を認める通知だ。再開は部分的で、当面は米国企業・組織が対象だ。日本など海外企業の利用には追加の承認が必要になる。

先端AIを巡って表面化した米政府とアンソロピックの対立は緩和に向けて前進するが、日本など他国にとっては高度なAIを使えないリスクが引き続き残る。

アンソロピックが消費者や企業に一般提供した「フェイブル5」の再開は認められていない。

アンソロピックは日本経済新聞に「進展を歓迎する。引き続き政府と協力してミュトス5のアクセス範囲を拡大し、フェイブル5の一般提供を再開できるよう努める」とコメントした。

ミュトスはシステムの脆弱性を見つける能力が高いAIで、従来も一般公開せずサイバー防御やインフラ関連企業に限って提供していた。一般向けのフェイブルには一部機能の性能を抑える安全対策を加えている。

日本経済新聞が入手した書簡によると、通知はラトニック米商務長官名で出された。アンソロピックと政府の協力によりAIモデルのリスクが低減され「適切な安全措置がとられた」と評価した。商務省が承認する「特定の信頼できるパートナー」によるミュトスの利用を許可すると表明した。

商務省の書簡によると、アンソロピックは先端AIの提供手順や安全対策の基準について米政府との協力を約束した。

アンソロピックは9日に2種類の最新のAIの提供を始めたが、悪用防止が不十分だと懸念した米政府から12日にAIを輸出管理対象に指定された。米国内を含めて外国人の利用に政府の許可が必要になり、同社は提供を全面停止していた。

アンソロピックの外国籍社員も輸出管理制度の対象になり、従来はミュトス5を利用できなかった。26日以降は同社内でもAIやソフトの開発に利用を再開できる。社内でも最新のAIが使えず、研究開発が遅れるとの見方があった。

輸出管理指定を知らせる12日付の書簡はダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)宛てだったが、26日付の書簡は計算インフラ責任者のトム・ブラウン氏宛てに変わった。米政府との協議はブラウン氏が担っており、アモデイ氏が政権側の不信を拭い切れていないことを映す。