政府による皇室典範改正案の内容が明らかになった。与野党協議でまとめた「立法府の総意」の枠を越え、男系による皇位継承を固めたい意向が鮮明だ。幅広い合意形成が必要な皇室を巡る議論の進め方として、乱暴と言わざるを得ない。丁寧な対応を求めたい。

先に公表された「立法府の総意」は、意見が割れる論点の多くで結論を出していない。皇室の養子となる旧皇族の子孫の子に皇位継承権を与えるかや、結婚する女性皇族の配偶者や子を皇族とするかどうかなどだ。

ところが政府が検討する具体的な皇室典範の改正案には、「総意」にはなかった内容がいくつも盛り込まれている。

養子に男子が生まれれば、皇位継承権を持つことが明確にされた。生まれた時から一般人だった人の子が天皇になりうるということだ。現在の天皇家に取って代わるということでもある。これほど大きな方針転換を十分な議論もなく行うのは、民主主義の軽視にほかならない。国民の理解が得られるか極めて疑問だ。

養子は配偶者と子のいない15歳以上の男子で、いったん皇族になれば自らの意思でその身分を離れられないという。養子選びに政治的な思惑が入り込む余地もあり、人権上も問題があろう。

結婚した女性皇族には住民基本台帳法が適用される。皇族は通常「皇統譜」と呼ばれる皇室の特別な戸籍に記載されるが、それとは異なる扱いになる。女系継承の可能性を排除する方策ではないか。

全体を通して男系継承にこだわる意図が明確だ。報道機関の世論調査では女性・女系天皇への高い支持が目立つ。養子案は賛否が割れるうえ「分からない」との声も多い。改正案は国民の意見を十分に反映しているとは言えまい。

皇室問題は国民統合の根幹に関わる特殊なテーマだ。だからこそ与党の「数の力」によらない議論が求められ、歴代政権も慎重に対処してきた。それを無視すべきではない。強引な改正は禍根を残す。