総務省はインドや台湾などインド太平洋地域を中心に通信インフラ整備の実証8事業を始める。海底ケーブルや衛星通信といった分野で同地域と経済安全保障上のつながりを強める。高市早苗政権が掲げる「デジタル回廊構想」の柱に位置づける。

月内にも8事業の公募を始める。

高市首相は5月にベトナムでの演説で「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の進化を打ち出した。通信分野では人工知能(AI)の普及を背景に需要が高まるデジタルインフラ整備を後押しするFOIPデジタル回廊構想を提起していた。

8事業には日本の通信事業者などの参画を想定する。2026年度は現地企業などと組んだ実証や調査研究を進め、実現可能性を検証する。

データセンター建設が相次ぐインドでは端末やデータセンター間の信号を全て光で処理するNTTの次世代光通信技術「IOWN(アイオン)」の実証を想定する。

現地の通信会社との接続試験や規制対応など必要な手続きの確認をする想定だ。2026年度内に課題や対応策をまとめ、27年度以降の実用化を目指す。

台湾では日本と結ぶ海底ケーブルの性能を向上する技術検証をする。近年、台湾周辺では海底ケーブルの損傷・切断が相次ぎ、中国の関与も疑われている。安全な接続環境を実現するのに必要な性能や現地規格との相性などを調べる。

シンガポールやインドでは決済など金融取引を高度にする技術の導入をめざす。世界最大規模の銅鉱山があるチリでもアイオンを使った遠隔作業を実証する予定だ。

26年度予算と25年度補正予算で計上した80億円から振り分ける。

FOIPは16年に当時の安倍晋三首相が提唱した外交構想で、法の支配、航行の自由、自由貿易などを理念に掲げた。ウクライナ戦争やイラン情勢の混迷などを背景に経済安全保障やエネルギーなどに領域を広げてきた。

米中のAI競争やグローバルサウス(新興・途上国)の台頭を背景に、デジタル分野で各国・地域と協調する重要性は増している。

データセンターではNTTデータとKDDIの2社が世界上位10社に入り、海底ケーブルはNECが世界シェア25%を握る。

総務省は日本企業が持つインフラ技術を生かし、デジタル回廊構想を進める。