企業の障害者法定雇用率が7月に2.7%へと引き上げられるなか、発達障害者の特性を活かす「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」への注目が高まっている。発達障害者はコミュニケーションやマルチタスクに課題を抱える一方で、優れたパターン認識能力や集中力を備えている場合があり、デジタルスキルとの親和性が高い。 デロイト トーマツは、デジタルスキルを学ぶインターンシップを通じて多くの受講生を採用しており、顧客のDX支援を担う人材も輩出している。また、オムロンはITセキュリティやAI分野の才能を持つ人材の採用を進めており、感覚過敏への配慮といった環境整備を行うことで、彼らの高い実力を戦力として活用している。 厚生労働省の調査では、雇用障害者数は2025年に70.5万人と過去最高を更新する見込みである。従来の障害者雇用は軽作業が中心であったが、今後はAIやロボットによる代替も予想される。深刻な人手不足を背景に、企業は障害者雇用を単なる福祉ではなく、能力を企業業績に結びつけるための「人材戦略」として捉え直す時期に来ている。
Sourcehttps://www.nikkei.com/paper/article/?b=20260628&ng=DGKKZO97204220X20C26A6EA4000

日本総研は発達障害者が活躍できる職場づくりを研究している
企業に課される障害者の法定雇用率が現状の2.5%から7月に2.7%へと引き上げられる。雇用の責任が増すなか、発達障害がある人の特性に着目したニューロダイバーシティーという取り組みが広がってきた。福祉的な雇用から人材戦略へ、企業の意識も変わろうとしている。
ニューロダイバーシティー(神経多様性)とは、Neuro(脳・神経)とDiversity(多様性)を組み合わせた造語だ。
発達障害のある人は一般的に周囲とのコミュニケーションやマルチタスクが苦手な一方、膨大な情報から規則性を見分ける優れたパターン認識能力や突出した集中力を発揮することが分かってきた。こうした特性はデジタルスキルと親和性が高く、その潜在力を企業活動に生かそうとする試みが注目されている。
デロイトトーマツは2023年にインターンシッププログラムを始めた。約5カ月間、デジタルスキルを講義と現場実習で学ぶ。これまで5回開き、受講生147人中110人を同社やグループ会社で採用した。
「顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援などを担う人材も出てきており、想定以上に可能性を秘めている」(HR部門)。こうした取り組みが奏功し、7月以降の法定雇用率2.7%をすでに全グループ会社で達成した。
オムロンは理工系の大学・大学院で学び、ITセキュリティーや人工知能(AI)などの才能を持ちながら就職活動では採用に至りづらい人材に照準を合わせる。これまでに約10人を採用した。面接ではほとんど話せなかったのに、入社するや高い実力を発揮して欠かせない戦力になっている事例もあるという。
特性があっても受け入れる企業側の環境整備は欠かせない。オムロンは専門部署を設け、能力を発揮できる条件を職場と一緒に設計する。感覚過敏の人への配慮で耳栓の装着を認めたり、照明を落とした執務席を準備したりもしている。
厚生労働省の調べでは、雇用障害者数(6月1日時点)は25年に70.5万人と過去最高を更新した。企業と研究会を立ち上げた日本総合研究所の木村智行氏は「発達障害のある人は人口の1割程度と推定される。人手不足が深刻な今、企業にとって貴重な戦力になりうる」と指摘する。
それでも従来の障害者雇用は郵便の仕分けや清掃などの軽作業を任せる事例が目立った。働く場を増やした成果は評価できる一方、当事者が望む働きがいのある仕事とは限らない。こうした定型業務はAIやロボットに代替され、職場からなくなる可能性もある。
障害者向けに特別に仕事を切り出して任せる手法はいつまでも通用しない。障害者のやる気と能力をどうすれば企業業績に結びつけられるのか。企業は障害者雇用を人材戦略に取り込む時期に来ている。
(編集委員 石塚由紀夫)