米国のイラン攻撃に端を発するホルムズ・ショックを受け、各国がエネルギーや資源の調達多様化を加速している。注目が高まるのがレアアース(希土類)や天然ガスなど天然資源が多く眠る北極だ。日本政府も対応に乗り出す。

2015年に策定した日本の北極政策は科学研究や国際貢献を主軸に置いた。資源の確保や北極海航路の利用を念頭に、改定作業に着手する。

新たな北極政策に向けた提言を準備する笹川平和財団の角南篤理事長は「資源に加え、安全保障面でも北極の戦略的重要性が増している」と話す。日本が国際ルールづくりに携わり、北極圏の分断を修復する役割を果たすことへの期待がある。

この10年余りで北極を巡る情勢は激変した。中国は17年、広域経済圏構想「一帯一路」の一環として「氷上シルクロード」を建設すると発表。グリーンランドの空港拡張工事への参画を打ち出すなど北極進出を強めた。

ロシアはウクライナ侵略で孤立し、北極は欧米とロシア側に分断された。トランプ米大統領のグリーンランド領有発言で欧米間に亀裂も走る。

北極には世界の未発見天然ガスの約30%、石油の約13%が眠り、「エネルギー資源の最後のフロンティア」と呼ばれる。

ホルムズ海峡封鎖は原油価格高騰を招き、ナフサなど石油化学製品の不足が深刻となった。エネルギー調達の多様化は急務で、角南氏は「各国が北極進出を加速することが考えられる」と話す。

日本もレアアース確保やエネルギー安全保障を重視する。「新たな北極政策にはより地政学的な色が出てくるだろう。日本の成長戦略に北極をどうつなげるかを打ち出すことになる」と語る。

11月には砕氷機能を持つ初の北極域研究船「みらい2」が就航する。日本は資源獲得などを追求した中国と異なり、科学的貢献に徹したことで北極圏国や先住民の信頼を得てきた。こうした関係が新たな政策の土台となる。

(出井亮太)