与野党から個人向け国債の購入促進策が浮上してきた。自民党に相続税の減税論があり、国民民主党は少額投資非課税制度(NISA)の対象に加える案を提起している。日銀に代わる安定した国債の買い手として個人に期待を寄せる。

国民民主は23日の会議でNISAに追加する法案をつくるため、参院法制局から課題を聞いた。参加議員から「メリットを分かりやすく伝えるべきだ」などの意見が出た。

玉木雄一郎代表は6月上旬の記者会見で「株と債券をバランスよく投資するのは企業でも個人でも最適なポートフォリオになる」と話した。個人の国債の購入を税制の優遇で後押しする考えを示した。

高齢者層狙う

同党は高齢者層からマネーを取り込む余地があるとみる。個人向け国債は元本を保証しており、安心して買いやすい商品との見方がある。NISAの利用率は年齢が上がるほど低下する傾向にある。

自民党にも減税論がある。18日に開いた党資産運用立国議連の会合で中西健治衆院議員が個人向け国債にかかる相続税を減免すべきだと提起した。世代を超えて国債の保有がしやすくなり、高齢者層による購入を促進できると主張する。

議連の事務局長代理を務める神田潤一衆院議員は会合後、27年度税制改正の論点になる可能性があると記者団に説明した。

他の主要国でも税制で個人向け国債の購入を促す例はある。財務省が24年にまとめた資料によると、主要7カ国(G7)で日本と米国、英国、イタリアが個人を念頭に置いた国債を出す。このうち日本を除く3カ国が優遇税制を持つ。

個人に国債の受け皿を期待するのは日銀が金融政策の正常化を進めているからだ。日銀は段階的に国債の購入額を減らしてきた。27年4月に減額を停止するものの、中長期的な縮小路線は変わらない公算が大きい。

与野党には個人ののびしろが大きいとの見方がある。財務省によると、25年度の個人向け国債の発行額は合計6兆円を上回り、19年ぶりの高水準だった。家計の国債の保有割合も1.8%と14年12月以来の水準になった。

相続税減免はNISAよりハードルが高い。24年度の相続税の税収は3兆円を超え、減免すれば大幅な税収減になる可能性がある。影響を緩和するため自民党内に減税を段階的に進めていくべきだとの意見が出る。

一方、国債を管理する財務省は個人向け国債の減税に距離を置く。

片山さつき財務相は8日の参院決算委員会でNISAの対象に国債を加える案に言及した。NISAについて「貯蓄から投資への流れの促進を目的とする制度だ」と話した。元本保証がある国債は預金に類するため対象として望ましくないと示唆した。

安定消化に懸念

政府が購入のインセンティブを増やすほど、金融市場に安定消化が難しいのではないかという疑念を持たせるリスクも抱える。

財務省は減税の代わりに新商品の導入を探る。5月下旬に同省の研究会で金融商品の購入経験がある5000人に望む国債の商品を尋ねた調査を公表した。「インフレ連動国債」を希望する意見が3割を超えた。同国債は元本が物価に応じて変動する。

市場関係者の間には「安定的に国債を買う主体が見つかったからといって財政健全化を棚上げしてもいいわけではない」といった声もあがる。

高市早苗政権は「責任ある積極財政」を掲げる。財政規律について市場の信認を保てなければ、国債の価値を毀損し、個人が痛手を負いかねない。